素質最大限実現型の子育てを

  みなさんは、生まれたお子さんの素質が最大限に内から花開くように、どれだけ努力・工夫されたでしょうか。ゼロ歳のときゼロ歳としての最高の花が、一歳のとき一歳としての最高の花が、二歳のとき二歳としての最高の花が咲くように、家庭の人間関係や文化的環境や家屋環境や経済的条件に、どれほど配慮し、努力されましたか。また三歳になられて本園に入られてからは、親として、園長として、教員として、三歳には三歳としての最高の花が、四歳には四歳としての最高の花が、五歳には五歳としての最高の花が咲くように、どれほど家庭と園の育て方の一体化に努め、またどれほど良心的に子育てに尽くしたか。残念ながら、まだ子ども達の素質を充分に生かさず、子ども達の自然性に反した育て方をしたり、上から教え込みすぎたり、放任しすぎたりして、子ども達をダメにしていることも多々あると思います。
 実にくどくどと書きましたが、これも自他ともに深く反省したかったからです。
 せんだって春休みに入るとき、みなさんに「子どもの自発性を誘導して大樹育成型の子育てを!」と訴えました。実は、初めは「園の藤棚の藤のような子育てを!」と書こうかと思ったのですが、みなさんには「大樹育成型の子育てを!」と言った方が受けられるか、と思って書いたのです。失礼しました。本当は大樹でなくても、ツバキにはツバキの良さがあり、桜には桜の良さがあり、藤には藤の良さがあるので、なにも杉や松や樫のような大樹だけが良いわけではありません。
 私は園庭の藤からは実に貴重な教訓を学びました。あの藤は、自宅の庭では十数年間さっぱり伸びなかったのです。ところが園の砂場の横へ移植したら、またたく間に、あんなに繁り、毎年見事な花を咲かせるようになったのです。なぜでしょうか。それは、子ども達が砂場に池や川をつくって水遊びするので、藤が多量の水に恵まれて、藤そのものの素質が最大限に実現して、素晴らしく成長して花を咲かせたのです。ところが私は藤の素質を知らないで、十数年間もそれを育てなかったのです。
   タンポポのような野生の植物は、放っておいても花が咲きますが、高度に進化した人間の子には、親や教員が適切な環境作りをして、子ども自身が生き生きと素質を発揮して、心身共に大きく育つことが大切なのです。

1990年4月

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